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僕の別居から離婚への‥心境をそして今生きる希望を探して。
第三章 離婚調停の開始

 第一 家事事件のしおり 


 平成十九年七月二十六日(木曜日)、突然君たちが連れ去られ『もぬけの殻』だったこと、翌日二十七日(金曜日)お母さんやおばあちゃんに怒鳴られ、さらに翌日二十八日(土曜日)には「塩まけ!」とまた怒鳴られたこと。
 その後、千里の担任の城田先生から転校手続きが進められていることを聴き、桜田課長夫婦と相談の上、二十九日(日曜日)お蕎麦屋さんでおばあちゃんたちと会ったけど、結局、連れ去りの理由や離婚調停申し立ての具体的理由もわからなかったこと。
 週が明けて三十日(月曜日)人間ドッグの後、市役所で確認すると、住民登録が『世帯分離』されていたことなどを話しました。

 どう? 君たち三人は、ここまではわかったかな。
 この先、いよいよ家庭裁判所で離婚調停がはじまるんだけど、こんな話を聴いていると暗くなって滅入るでしょ。ふふっ、ごめんね。
 じゃあ、続きを話すね。説明下手のお父さんですが、辛抱して聴いてください。

 八月に入って、田上次長にも課の同僚にも打ち明けず、何事もなかったように振る舞いながら出勤していました。田上次長の態度も普段と変わっていなかったから、電話で休暇をお願いした時に感じた雰囲気は、単なる勘違いだったのかなって思っていました。
 勿論、お父さんの胸のうちは不安と悲しみ、苦悩、孤独感に打ちひしがれていたし、デスクでパソコンに向かっていても、お母さんと君たちを片時も忘れることはありませんでした。
 仕事が終わると真っすぐ帰宅して、夕飯は抜いてしまうか、近所にあるお弁当屋さんの二百九十円の弁当で済ませ、シャワーを浴びたらすぐにベッドに横になるパターンの日々。だって、家に帰ってもまったく会話もないし、物音もしない家の中で一人でいると、もの凄く孤独なんだから。
 テレビを観ればいいって? 千里、冷たいだろ。友里、何笑ってんのよ。
 テレビなんてスイッチをONする気にもならないし、家では三種の神器から脱落。
 洗濯? うん、何とかしてたよ。でも、ワイシャツのアイロンがけに四苦八苦。結局、皺くちゃなままで出勤して、かろうじて、皺のないハンカチで汗を拭うことができるだけの、惨めな男の一人暮らしでした。

 事態は、じわじわと悪い方向に流れていてね。
 お父さんの携帯電話、家の固定電話は着信拒否にされて、何度電話しても『ただいま留守にしています。後ほどおかけください。プチッ』って。手紙を書いて連絡する方法以外、お父さんからの連絡は遮断されてしまいました。
 桜田課長と奥さんの二人も、あらためてお母さんの実家を訪問してくれたんだよ。
 あらかじめ連絡を入れて、約束をした上でお邪魔したんだけど、玄関には鍵がかけられ留守だったんだって。
 君たちは一緒に生活していたんだから、その時どうしていたのよ。 
 お母さんも、おばあちゃんたちも、みんなで朝から逃げちゃったの?
 おじいちゃんは男でしょ。そんなことしなくてもいいのに。
 仕方ないから、課長夫婦は手土産のお菓子が入った紙袋に名刺を入れて、玄関のドアノブに下げて戻りました。しかも、それ以後、課長の電話も着信拒否にされちゃったよ。
 会う約束をしておいてこの仕儀。お母さんのことも、君たちのことも心配して動いてくれた課長と奥さんに申し訳ない気持ちでいっぱいでした。

 お父さんの実家の電話は着信拒否にされていなくて、父も訪問してくれました。
 でも、玄関から中に入れてもらえず、お母さんは「一回目の調停が終わるまで何も話せない。それが終われば話ができるから」と言ったんだって。
 母も電話してくれました。
「俊介さんは何人もと不倫していた。そんな家に育ったからろくな者じゃない。親戚もみんなそう言っている」
 お母さんはそう言ったんだって。
「私に免じて思い直してほしい」
 母は、そう頼んだそうです。
 しかしさ、何人もと不倫、そんな家に育ったから、って……。まあ、お母さん興奮状態だからね。
 お父さんの同期の浅田さんの奥さん、君子ちゃんのことは君たちも知っているでしょ。
 この二人も心配してくれて、君子ちゃんとお母さんは割とウマが合っていたから、君子ちゃんがどんな様子か電話で訊いてくれることになっていたんだ。
 数日後、連絡がありました。
「俊介、君子が電話したら凄かったらしいぞ。俊介が何人もの女と不倫していたとか、お金は湯水のごとく下ろすし、子供は塾にも行かせない。散々、悪口並べていたらしい。俊介、お前には悪いんだけど、前の京子ちゃんと全然違っていたらしい」
「わかった。浅田すまなかったな。君子ちゃんにもありがとうって伝えてくれ」
 予想どおりでした。お母さんのなじりと嘘はとどまるところを知らない。
 母への言葉といい、三つ子の魂百まで。その素養を変えることはできないということだろうか……。

 仲人の課長夫婦や父が訪問したことについて、
「仲人や親を使って交渉するな!」
 と、沢田弁護士からお父さん宛に、抗議の手紙も届きました。
 弁護士の立場からすれば交渉なのだろうけど、仲人は親同然。父も親。家族の一員です。
 家族がみんな心配しての純粋な情からの行動でした。『交渉』などと裁判手続きのお堅い、血の通わない用語で一括りできるようなものではありません。もう裁判沙汰にしているお母さんの気持ちもわかります。でも、お父さんは、他人の弁護士からの冷たい手紙をそう思って受け取りました。

 ただ、一回目の調停が終われば話ができると、父にそう言っていたお母さんの言葉を信じました。その時には、具体的にどんな理由で離婚を申し立てたのかわかるし、そうすれば誤解も解けて君たちも元の生活に戻ることができるって。
 お父さんは、妻や家族と裁判をするなんて考えたこともなかったから、訴訟も、対抗手段も、弁護士を依頼することも考えていなかったし、そもそも裁判をする理由もないから、お母さんの言葉が唯一の希望でした。そう信じていました。

 それにつけても、お父さんはこれまで裁判所に出頭したことなどないし、調停に関する知識もありませんから、心配になって、ネットで裁判所の『家事事件のしおり』というパンフレットを確認しました。
『家事事件は、家庭内の問題を取り扱うものですから――形式ばらずに、なごやかな雰囲気のなかで、自分の考えを述べることができますので、どなたでも安心してご利用になれます』
『――調停では、家事審判官又は家事調停官と2人以上の家事調停委員で構成される調停委員会が、双方から事情を尋ね、意見を聴き、双方が納得のうえで妥当な解決ができるように努めます』
 と、テーブルを囲んで当事者と笑顔で話している様子が、イラスト付きで紹介されていました。

 家庭裁判所でも検索しました。
 トップページには『日章旗』が映っていて、見た目にもお堅い裁判所の建物が写真掲載されています。 案内をクリックして、そこから『家事事件とは』に飛びました。
『――どのようにすれば家庭や親族の間で起きたいろいろな問題が円満に解決できるのかということを第一に考え、職権主義の下に、具体的妥当性を図りながら処理する仕組みになっています』
 と少々お堅い表現だった。
 職権主義の下に――難しいことはわからないけど、パンフレットなどからしても、円満解決のために、公平中立に、双方の言い分をよく聴きながら話し合いが行われるんだと理解しました。
 夫婦関係や男女関係に関する調停をクリックすると、『夫婦関係調整調停』には、離婚や財産分与、親権の指定などを話し合う離婚調停と、夫婦関係を元に戻すために話し合う円満調停があることもわかりました。
 お母さんが申し立てた調停は、弁護士からの封書の内容、おばあちゃんの言動等からして、円満ではなく離婚を求める調停であることは想像がつくし、申立人が提出する『申立書』には、申立ての趣旨欄に、離婚を求めることはもちろん、親権者の指定や慰謝料の金額などを記載したり、申立ての実情欄には、夫婦関係が不和となった事情などの調停申立ての理由が記載してあることも知りました。
 お父さんは、裁判所のサイトを確認して、法治国家の日本の裁判所がやる手続きに間違いはないだろうと思ったし、双方から事情を尋ねると書かれていたから、当然、お母さんが申し立てた内容をお父さんに訊いて真偽を確認してくれるものと思っていました。
 まあ、そんなこと当たり前だもんね。

 その後、もののついでに『離婚』で検索してみたんだ。
 そこには、『離婚で必ず勝つ方法』とか『離婚調停有利に進める実践的指南』『しっかり慰謝料をもらおう』『親権を勝ち取る』といった文字や、『離婚相談』の弁護士事務所などへのアクセスサイトが氾濫していたんだ。
 有利不利――。勝ち負け、指南、お金、お金、お金――。
 離婚ビジネスの宣伝、勧誘。『お客さんいらっしゃい』みたいな。
 お父さん、吐きっぽくなった。
 これまで、離婚などという文字を打ち込んで検索したことがなかったけど、画面に氾濫する大量のこれらの文字に、これが現実なのか……って。
 ショックを通り越して、気持ちが悪くなってしまいました。
 離婚する夫婦の有利不利とは、勝ち負けとはいったいなんなのだろうか? 
 現実的には、慰謝料の額、親権であったりと、その意味はわかるけど、その中に勝ち負けなどあるのだろうか。やっぱりお金の多い、少ないの問題なの? 親権を争うということは、父親が子供の右腕を、母親が左腕を引っ張り合い、子供の腕を引きちぎろうとすることではないの? 子供からすれば、父も母も永遠に親だよね。逆に親からしても永遠に子供。何故、一方だけに親権が認められてしまうの。
 お互いに権利を主張し合い、相手を排除する、そんなことをするために指南を受け、有利不利と戦略を練り、あげ足まで取ってお札の枚数を数えるようなことに、お父さんは価値観も興味も湧いてこない。
 離婚には、夫婦それぞれの事情もあるだろうし、画一的に論じられないとは思うけど、お父さんは、自分が離婚調停の当事者となって、はじめてそんなことを考え意識し、正直なところ、違和感だけでした。
 だから、パソコンの画面を見ていること自体に吐き気と抵抗を感じて、すぐにネットを遮断しパソコンの電源まで落としました。
 あああ。変なもの見ちゃった! 本当に滅入った。
 洗面所の蛇口をひねり、冷たい水をジャージャー流しながら何度も顔を洗って、ネットサイトに氾濫している離婚商売じみた文字の残像を消しました。



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【2012/09/04 21:05】 | 感謝の言葉とお知らせ
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