僕の別居から離婚への‥心境をそして今生きる希望を探して。
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第二 一一〇番通報

 平成二十年の元日の朝、外は雪景色でした。
 玄関先の雪かきをして、実家から送ってもらったお餅を味噌汁に放り込んで、一応、お雑煮。
 ほかは、実家で漬けた野沢菜とたくわん。これでも男の一人暮らしには十分な御馳走でした。
 テレビを観ながら一人だけのお正月を過ごし、また、自転車で通勤する毎日がはじまりました。
 冬場の通勤は一苦労。そんな苦労も消してくれるのが、白銀の白馬の山々でした。孤独感が充満した生活の中で、もの言わぬこの山だけが、毎日お父さんを見送ってくれていました。

 年明け早々、父から電話がありました。
「俊介。お前、京子にお金を一円も送ってないって本当か?」
 厳しい声で訊かれました。
「いや、送っているよ」
「この前、京子に電話したんだ。そしたら『俊介さんは一円も送ってくれないから、私が働いたお金だけで生活している』そう言ってたぞ。どうなんだ」
「塾の話と同じだよ。『うちのお父さんは塾にも行かせてくれない。私のお金で行かせている』このパターンだよ。親父も引っかかっちゃったんじゃないの」
「お前な、そんなこと言っても、口だけじゃダメなんだ。送金しているなら証拠を見せて俺に説明してみろ」
「ああ、いいよ。わかった」
 お父さんは預金通帳の写と、振込送金書の写を、早々に速達で父宛てに送りました。
 すると数日後、父から電話がありました。どうやら、予告なしでお母さんの実家を訪問したようです。
「京子に会って来た」
「よく会えたじゃない? 奇襲攻撃だね」
「玄関にしか入れてもらえなかったけどな。それで、京子に、お前から届いた通帳や振込の写を見せて『送金しているじゃないか。百万からの金が入っているじゃないか。何で嘘をつくんだ』と怒ってやった」
「ねえ、そんなことのために行ったの?」
「そうじゃないさ。もう難しい話はやめて家に戻れって、その話をしに行ったんだ」
「それでどうだったの」
「京子に何で嘘をつくんだと怒ったら、下を向いてもじもじしているだけで一言もなくて、横にいたお母さんが『それは京子が何か間違えたんだにぃ。お金はもらってるでなぁ』って口を挟んで、言い訳してお終いさ。まあこんな感じだ」
 父は古いタイプだから、会話は端的だし、短い。
 それにしても、お母さんの嘘はわかっているけど、おばあちゃんの言い訳には呆れました。
 送金を受けているかいないか、間違えるはずがないでしょ。嘘をついた非を絶対に認めない。
「わかった。それで、京子は戻るって?」
「そっちはダメだ。弁護士に任せてある。もう私たちにはどうにもならないって、その一点張りだ」
「そう。親父、出向いてもらってありがとう」
 父に礼を伝えた。
 お母さんも相変わらずでした。でも怖いのは、そんな嘘ばかり話していると、誰もがみんなそう信じてしまうことです。父もその一人になりかけたけど、お父さんとは親子だから直接説明できるし、証拠を送ったから騙されずに済んだんです。きっと、お母さんの親戚や友人は同じことを聴かされ、騙されているでしょう。もう十分想像がつきます。
 それは罪深いことなのに、お母さんはどうしても嘘と事実歪曲の癖が抜けません。お母さんには、嘘をついたらしっかりとその場で叱れる父のような人がいれば……。今更ながらに感じていました。

 でも、こんな父も、昨年帰らぬ人となりました。
 君たち三人とは最後の言葉を交わすこともできなかったね。
 病院のベッドで、薄れる意識の中、君たちに『頑張れと伝えてくれ』と言っていました。
 これが父の、君たちのおじいちゃんの最後の言葉でした――。

 調停に関しては、離婚、婚姻費用、面接交渉の三本が重なっていたので、実質同時並行で進行していて、面接交渉の調査官聴取は、二〇代半ばの女性調査官が担当でした。裁判所に呼ばれて、家族の普段の生活や子供たちとの触れ合い、夫婦の関わり合いなどを訊かれました。
 お母さんも同様に聴取されたようで、双方の聴取を踏まえ、後日、調査官が子供たちと面接して判断するようでした。
 しかし、この後、女性調査官の転勤が決まり、担当が交代するとかで、再度呼び出され説明することになりました。

 新しい担当は、三十代の男性調査官です。
 調査官は、面接交渉の意義、面接交渉が果たす役割、子供の福祉とは何ぞや、調査官という職の役目など、前置きの説明をとうとうとしました。
 調査官の聴取そのものは、女性調査官に説明した内容の確認程度で、簡単な質問に答えただけです。
 調査官の前置きの説明時間の方がよっぽど長かったけどね。調査官は、ひととおりの質問を終えるとノートを閉じて顔をあげました。
「この案件は却下になる可能性が高いですよ。会えたとしても、裁判所の担当が立ち会って、五分から十分位しか会えないでしょう。それでは会った気もしないでしょうし、取り下げした方がいいんじゃないですか」
 お父さんと弁護士はあっけにとられ、顔を見合わせました。
 面接交渉を申し立て調査官の聴取がはじまったばかりなのに、取り下げろという言葉が信じられなかったからです。
「弁護士さんと二人で話したいんで席をはずしてもらえませんか」
 調査官はすぐにお父さんに退室を促し、渋々待合室に戻りました。
 お母さんは訴えているわけだから、お父さんを悪い男だと説明していることは想像がつくけど、お父さんだってちゃんと女性調査官に説明したし、却下される理由がわかりませんでした。
 ほどなく弁護士が戻りました。
「調査官から取り下げるように話してくれって説得にあっちゃいましたよ。だから僕はそんなこと言えるはずないでしょって。そしたら、そこをなんとか説得してくれって言うんですよ」
「ええー、どうしてなんですか。まだ聴取がはじまったばかりで、調査官自身が子供たちとの面接もしてないのに、最初から取り下げろなんて変じゃないですか」
「確かに、僕だって最初から取り下げろなんて変だと思うよ。何だかよくわからないね」
「先生、私は子供たちと楽しく暮らしていたんですよ。それが、突然引き離されたんです。何故、私が自分の子供に会えなくなるんですか。私は子供に会えなくなるようなことは、何ひとつしていません』
「いやあー、僕も田中さんと接するようになって雰囲気だけでわかりますよ」
「最初の女性調査官から一度だけ訊かれて、交代したこの調査官は今日が初対面じゃないですか。なのに、何故、最初から却下とか、取り下げろなんて言うんですか。信じられません」
「だから、僕だってそう思うよ。田中さん、これね、最初から会わせるつもりなんてないよ」
「はあ? 先生、それ変ですって」
「うん、変だよ。僕も考えられないもの」
 弁護士も困っていました。お父さんは納得できなかったけど、今後の推移で対応するしかありませんでした。また、この後は、裁判所が人事異動期を迎えていることもあって、調停日程は四月に入ってからになるようで、それまで少し時間があきました。

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【2012/09/24 21:02】 | 感謝の言葉とお知らせ
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